マンション管理士の仕事

マンション管理士という資格は平成１２年１２月８日に公布され、翌年の
平成１３年８月１日施行された「マンション管理の適正化の推進に関する
法律」の中で認められている比較的に新しい資格です。

ここでは、どのようにしてマンション管理士が誕生するのか？そしてどん
な仕事をするのか？を述べたいと思います。

マンション管理士になるためには、国土交通大臣指定の財団法人マンショ
ン管理センターが実施するマンション管理士試験（国家試験）に合格する
ことが必要です。

マンション管理士に関しては他の資格を持っていても、優遇措置は殆どあ
りません。

僅かに、管理業務主任者の試験に合格している人に、試験でマンション
管理の適正化の推進に関する法律（マンション管理適正化法と略されてい
ます）の問題５問のみが免除されるだけです。

弁護士、司法書士、行政書士などの法律系の士業の方も試験免除の特典は
ありません。

マンション管理士試験の出題範囲は次の通りで、以前にもこのブログで書
きました。

マンション管理士試験の出題範囲

１．法令・実務に関するもの

建物の区分所有等に関する法律
被災区分所有建物の再建に関する特別措置法
マンションの建替えの円滑化等に関する法律
民法
不動産登記法
マンション標準管理規約
マンション標準管理委託契約書
建築基準法
都市計画法
消防法
住宅の品質確保の促進等に関する法律
民事訴訟法
民事執行法

２．マンション管理組合の運営の円滑化に関するもの

管理組合の組織と運営
管理組合の業務と役割
管理組合の苦情と対策
管理組合の訴訟と判例
管理組合の会計

３．マンションの建物及び付属施設の構造及び設備に関するもの

マンションの構造・設備
長期修繕計画
建物・設備の診断
大規模修繕

４．マンション管理の適正化の推進に関する法律に関するもの

マンションの管理の適正化の推進に関する法律
マンション管理適正化指針

試験問題は４択で５０問ですが、合格には約８割の正答が必要です。

理系・技術系の国家試験は６割を合格ラインとしていることが多いよう
ですので、それから見ると、これはかなりの難関でもあります。


マンション管理士の登録

マンション管理士となるためには試験合格後、登録が必要です。

登録には、マンション管理士試験に合格すれば実務経験とか実務講習などは
必要有りませんが、次に該当する人は登録が出来ません。


マンション管理士の登録欠格事由

・成年被後見人（家庭裁判所の審判による）

・被補佐人（家庭裁判所の審判による）

・禁固以上の刑に処せられて執行を終わり、又は執行を受けることが無く
　なってから２年を経過しない者

・マンション管理適正化法の規定により罰金以上の刑に処せられ執行を終
　わり、又は執行を受けることが無くなってから２年を経過しない者

・一定の事由により管理業者の登録取消処分を受け、取り消しの処分から
　２年を経過しない者取り消しの処分から２年を経過しない者

・一定の事由により管理業者が法人であるときは登録取り消しの日前３０
　日以内に役員であった者

・一定の事由により管理業務主任者の登録の取消処分を受け取り消しの日
　から２年を経過しない者

・一定の事由によりマンション管理士の登録取り消し処分を受け、その取
　り消しの日から２年を経過しない者


「一定の事由」とは

上記の欠格事由の中の「一定の事由」とは、それぞれの資格の取消処分に
より異なります。

☆管理業者の取消処分

・偽りその他の不正の手段により管理業者の登録を受けたとき

・業務停止命令の対象となる行為をし、情状が重いとき

・業務停止命令に違反したとき

☆管理業務主任者の登録取消処分

・偽りその他の不正の手段により管理業務主任者の登録又は管理業務主任
　者証の交付を受けたとき

・指示処分の対象となる行為をし、情状が重いとき

・事務禁止処分に違反したとき
・管理業務主任者資格者が管理業務主任者としてすべき事務を行った場合
　で、情状が特に重いとき（資格者は登録が完了してはじめて主任者と
　なります）

☆マンション管理士の登録取消処分

・偽りその他の不正の手段により管理業者の登録を受けたとき（必要的
　取消処分）

・すべての任意的登録取消処分

以上の欠格事由をすべてクリアーして初めて、マンション管理士登録が
出来、登録が完了すれば、晴れてマンショ管理士となります。


マンション管理士の義務

マンション管理士には次の３つの義務があります。

�@マンション管理士はマンション管理士の信用を傷つけるような行為を
　してはならない。

�Aマンション管理士は国土交通省令で定める５年ごとに法定講習を受けな
　ければならいい。

�Bマンション管理士は正当な理由が無く、その業務に関して知り得た秘密
　を漏らしてはならない（マンション管理士でなくなった後も同じです）

従って、マンション管理士であるということは、それだけで社会的に一定
の信用が与えられると言っても間違いではないでしょう。


マンション管理士の仕事

法律によれば、マンション管理士は、マンションに関連する法律や技術的
な専門知識を使って、マンションの管理組合の運営・その他マンションの
管理に関して、管理組合の管理者等（通常は理事長と言われている方で
す）、 またはマンションの区分所有者（マンションの住戸の所有者で
す）からの相談に応じて、適切な助言・指導・その他の援助を行うことが
その主な仕事です。

単純に言えばマンションの管理に関することならあらゆる事です。

従って、単純に定義できない幅が広いものです。

しかし、どの士業も同じですが、マンション管理士が職業として成り立つ
かどうかは、そのマンション管理士の個人的な資質や実力によることが
大きいです。

試験はあくまで最低限の知識で、それ以降に受験勉強以上の勉強が必要で
す。


マンション管理士に必要なプラスアルファと考えるもの

マンション管理士はサービス業です。

職業ですから、利益を考えるのは当然です。

しかし、営利以外に、社会的責務というものも考える必要があります。

私は、基本的に相談を無料としています。

そのために、かなり遠方の方からの問い合わせもあります。

損益を度外視して、困っている方の相談に乗って解決の糸口のヒントを
考えて差し上げる場合もあります。

また、かなり遠方の方の依頼は、交通費や宿泊代、更に１度の出張で解決
の見込みが無い事案であれば、地元のマンション管理士さんを紹介もして
います。これも、依頼者の経済的負担を考慮した結果です。

マンション管理士は常に依頼者の立場に立って、より有利に考えることも
大切であり、これも私は１つの社会的責任だと思っております。

話少し変わりますが、他の士業の方は事務所に座って、依頼者がすべての
必要書類を持って訪れるのを待って、仕事に取りかかるのが普通ですが、
私の基本は、自分から出向いて、専門家として出来るだけ資料を自分で
分析、確認して解決の道筋を考えます。

仮に訴訟になりそうな案件でも調査し、証拠の収集など、私の今までの
経験から依頼者に具体的に助言・援助いたします。

これは、何が証拠として有用かの判断は通常の人には無理だからです。

そして、万全を期して弁護士に依頼するまでの補助は私の職務と考えて
います。

私はいつも、「屋」でなく、「士」としての理想を持ち続けたいと考えて
おります。

マンション管理士資格を目指している方へ

◆マンション管理士試験受験資格
マンション管理士試験の受験資格は特にありません。
外国人でも受験資格はもちろんあります。

◆マンション管理士試験の出題範囲

１．法令・実務に関するもの
建物の区分所有等に関する法律
被災区分所有建物の再建に関する特別措置法
マンションの建替えの円滑化等に関する法律
民法
不動産登記法
マンション標準管理規約
マンション標準管理委託契約書
建築基準法
都市計画法
消防法
住宅の品質確保の促進等に関する法律
民事訴訟法
民事執行法

２．マンション管理組合の運営の円滑化に関するもの
管理組合の組織と運営
管理組合の業務と役割
管理組合の苦情と対策
管理組合の訴訟と判例
管理組合の会計

３．マンションの建物及び付属施設の構造及び設備に関するもの
マンションの構造・設備
長期修繕計画
建物・設備の診断
大規模修繕

４．マンション管理の適正化の推進に関する法律に関するもの
マンションの管理の適正化の推進に関する法律
マンション管理適正化指針


◆マンション管理士試験の合格者数（平成22年）
受験申請者20,348人
受験者人17,704
合格者人1,524
合格率8.61％


◆私の体験からの感想
国家試験は多くありますが、その難易度には差があります。マンション管理士試験は決して易しい試験ではありません。しかし、国家試験は性格上、天才、秀才を対象とする試験ではなく、一般的な普通の人を対象としています。従って普通の能力を持っていれば誰でも合格できるものと思います。合格する人と不合格となる人の違いと言えば学力の差です。
なぜ学力の差がついてしまうかと言えば、学習の苦痛（？）に耐えて学習したか否かの差でしょう。言葉を換えて言えば、己との戦いに打ち勝つことができたか否かということに尽きると思っています。
私は専門学校のマンション管理士講座で学びました。
経済的観点からは言えば独学は良いのですが、受験対策ということから考えると、それなりの専門学校の講座で学んだ方がより近道と私は思っています。
現在、マンション管理士の活用はまだまだ一般的に普及している言とはえません、しかし、職業としての将来性のあるものと考えております。
マンションという住生活環境を守る「戦うマンション管理士」の誕生を私ども現役のマンション管理士は期待しています。